金沢能楽会(12月)行ってきました!〜圧巻の「放下僧」を鑑賞してきました〜

みなさま

いかがお過ごしでしょうか?

今回は年内最後となる金沢能楽会の12月定例能を鑑賞して来ましたので、そのレポートをしたいと思います。

 

今回の注目は「放下僧」です。

何が一番驚いたかといえば、この「放下僧」はなんと主君の仇を撃つための復讐劇なのです!

今まで私が拝見してきた能は、ほとんど全てが「怪奇譚」や「縁起物」だったので、歌舞伎の「白波物」「荒事」のような激しいテーマを能楽で扱うのか、と驚いてしまいました。

実際、シテ・ワキの二人はともに「放下僧」と言う、遊行僧のような装束に身を包んだ人物ですが実は武士。所領をめぐる争いで命を落とした亡き父親の仇を打つため、放下僧として正体を隠しながらその仇を探している、というのがあらすじです。

ところでこのストーリー、どこかで聞いたことはありませんか?

そうですね、歌舞伎好きの方なら「助六・ゆかりの江戸桜」のあらすじそのままです!助六と揚巻も「大原の遊女とその取り巻きの遊び人」という風態をしながら仇を探している、というのが人物設定でした。

そして演目後半、シテ・ワキがツレとの話に興奮するあまり、ワキがツレに斬りかかろうと詰め寄るシーン、これはまさに「勧進帳」の有名な「詰寄」のシーンを彷彿とさせます。

以前に拝見した「土蜘蛛」も、後シテとワキ・ツレとが対決するシーンは歌舞伎の演目のような激しさを彷彿とさせるものでしたが、今回の「放下僧」も能楽は静かに、ゆっくりと演じられるもの、という私の認識がガラッと変わった演目の一つでもありました。

そして同時に、激しさを感じさせる動きを多々含みながら、バックコーラスの「謡」がしっかりと全体の語りと進行を担っているという全体の構成は能楽ならではの優雅さ、そして激しさとを併せ持つ、とても興味深い演目でした。

 

そして最後に。賛助会員として、金沢能楽会の定例能を何とかこの一年を見守ることができ、安堵の気持ちでいっぱいです。

今年の初回の定例能は大雪から始まりました。金沢市内も道路事情が非常に悪く、1月の定例能は参加を見送りましたが、続く2月からはコロナ禍でデルタ株の感染拡大が広がり「外出自粛」が全国規模で呼びかけられる様になる中で、能楽堂も非常に閑散とした中2月、3月公演は行われていたのを記憶しています。

休憩時間に関係者の方とも立ち話をする機会もいただきましたが、「やっぱりお客さんが少ないと、能楽士としては張り合いがないねえ」とおっしゃっていたのが印象的でした。

先月、今月とほぼ満席の状態で上演するようになりましたが、10月までは本当に能楽堂もがらんとしていて寂しかったですね。

ですから、大入りの中今年最後の定例能が無事に終わっただけでも、「本当に色々あったが、通い続けてよかったな」と思える一年でした。

特に女性能楽士の松田若子さん・福岡聡子さんのご活躍をこの一年通じて拝見する中で、松田さんとは別の会でも拝見させていただいたのは大変に感謝致したく、御二方の今後のご活躍を心より祈念しております。

 

来年も学習塾Yuは金沢能楽会の賛助会員として、宝生流能楽の維持と発展に微力ながら貢献をさせていただきたいと思っております。

来年も一人でも多くの方が能楽堂に足を運び、能楽に親しんでいただけることを当塾としても願っております。