【連載】「中高オール学年一位」の秘訣 ~最初の一歩を踏み出すために~

皆様

いかがお過ごしでしょうか。やっと初秋の気候のように、気温が落ち着いてきたのかなあと思う今日のこの頃。

今日のテーマは、昨日予告した通り、本書第二章の「自分に『マインドコントロール』をかける3つの条件とテクニック」(119頁)の解説を進めていきます。

いきなり「マインドコントロール」って聞くと、ちょっとドキッとしてしまうかもしれません。日本語訳は「洗脳」という意味。勉強をさせるための「洗脳」?なんだかかなり危険な感じがしますね・・・

ですが、本書では「自分で自分を」マインドコントロールするという所がポイント。エッ!自分で自分を洗脳するって・・・薬物投与?、いや、そういう話ではありません(笑)

自分で自分を操る(仕向ける)ようにするために「メタ認知能力」が活用される、という話です。

マインドコントロールと「メタ認知能力」、いったいどういう関係があるのでしょうか?今日はそのあたりを見て行きましょう。

本書第二章の最初のキーワードは「現状認識」「自己認識」です。

「現状認識」や「自己認識」とは、平たく言えば本書で紹介されているような「まず『己を知る』こと」(125頁)です。「孫氏の兵法」なんかでも解かれているこの「己を知る」ということ、言われればなんとなくふーん、と思うでしょう。

そしてこれは第二章のタイトルにもなっている「『次の一歩』が意外に難しい。それはなぜ?」に通ずる重要なファーストステップです。

私達人間は、楽しいこと、楽なこと、興味のあることはやりたがるけれども、面倒くさいこと、大変なこと、嫌なことは後回しにしようとする傾向が一般的にある、と言われます。

これは私ももちろん、皆さん誰もが経験があることでしょう。

第一章では「内発的動機」「主体性」の話が紹介されていましたが、第二章では「内発的動機」や「主体性」によって設定された目標を、ではどう実際の行動に移せばよいのか?そのための最初のきっかけづくりがこの「現状認識」「自己認識」にあると本書では述べたいのです。

どういうことか?

例えば登山を考えてみましょうか。昨今の山ブームに乗っかって、友人たちと一緒に「富士登山に挑戦しよう!」と目標設定したとします。

この「富士登山に挑戦しよう!」というのは主体性を持った立派な「内発的動機」に基づく目標です。では、目標を決めたまではいいが、「じゃあ、何を準備するの?」「スケジュールはどうする?」「体力づくりはどうする?」「高山病怖いなあ、何か対策はないかな」なんて色々な懸念事項、準備項目が挙がってくるかなと思います。

その各々の項目に対して、逐一チェックをしていくわけですよね。ザックと登山シューズを持っていないから調達しないといけない、とか毎週ジョギングで体力づくりをする、持病があるから病院で診てもらって処方をしてもらおう・・・など様々な「富士登山をするための次の一歩」が具体的に浮かんできますね。

「現段階で何が足りないか」「何が必要か」を知るのは、極めて自然な考え方。だからこそ「踏み出すべき次の一歩」が明確になる、これはお分かりいただけると思います。いきなりレンタカーを借りて、着の身着のまま明日富士山の五合目まで行て登頂してみよう、なんてことを考える人はいませんね(笑)

本書では、受験勉強もこれと全く同じだ、というのです。

何となくお分かりになっていただけるかと思いますが、「~~大学合格」という最終目標は登頂成功そのものですし、登頂に成功するための装備、体力、スケジュール等の確認はまさに「現時点での自分の学力レベルの(再)認識」プロセスと全く同じだということもお分かりいただけるかと思います。

では受験勉強における現状認識、自己認識はどう行うのか?それこそが本書の「メタ認知能力」にあると言っています。

「メタ認知」とは本書でもしばしば出てきますが、ここでは本書の定義を借り「俯瞰して物事を見る能力」(127頁)として話を進めましょう。「自己の客観視」だったり「第三者的な視点から自分を見つめること」と理解しても良いかもしれません。ここでは「自分の能力を」俯瞰して、という意味です。

富士登山であれば、富士山が実際に3,776mという具体的に近くできる高さにあるため、登るべき高さが知覚しやすい。ところが「大学受験」という山の高さは実際にどの程度高いのかということは偏差値などで「何となく」把握することしかできません。

だから、その「山頂」をまず最初にお試しで登ってもらうことを通じて、本人にその山の高さを「疑似体験」してもらうことが目的です。

同時に、自分がこの「山頂」を登りきるためにどういった道具・装備(テキスト、参考書等)をそろえ、どれくらいの体力(学力)をつけて臨むことが必要か、ということをアドバイスるする指針とするのがその趣旨です。

いきなり志望校の過去問を解かせるやり方もあるでしょうが、当塾はセンター試験の過去問を解かせれば大体生徒の英語力は分かると思っています。何も生徒をへこませるためにやっているわけではなく、こうした「現状認識」をしっかりと持つことで、しっかりとしたプラニングができるようなベースを作ることが目的です。

このやり方は、実は前回投稿でお伝えした「成長」を自身で実感する上でも極めて効果的なやり方です。

私が社会人になって初めての新人研修の教育でこんなことがありましたのでご紹介したいと思います。

新人研修の初日で私達は全員プログラミングに関する出題を30分くらいかけて解くのですが、一部の高専生を除きプログラミングなんてやったことのない学生が大半だったので、その問題は最初の1,2問をといて全くの白紙。「分かるわけないだろ!」って半ば心の中で怒りながら30分を過ごしたことを覚えています。

採点はもちろん大半の同期が0点か数点。研修初日でいきなり0点をもらってしまい、私含め同期はかなり驚きました。その日のお昼ごはん、皆絶句していたのを覚えています(笑)

ですがこれが実は狙いだったのです。社会人に対してなので多少の粗治療にはなるのですが、「無知の知」を各自に悟らせるわけです。と同時に、皆一様に悔しいので、解けなかった問題の一問一問を強烈に覚えています。だから翌日からの講義開始の前に「自分が分からないこと」が各自の旨の中に強烈に刻まれるわけです。

そしてその後一か月におよぶプログラミング研修が開始、コンピューター理論の基礎から二進数、十二進数の考え方、インターネット理論やプログラミング理論などあらゆることを学びます。

そして一か月後に全く同じテストを受けた時、私達全員が満点を取りました!と同時に、一か月前に「こんな簡単な問題も解けなかったなんて!」と自分自身に皆が驚く有様でした。

もちろん社会人と学生とで基礎学力は異なるでしょうが、最初のテストは見事に各自の「現状認識」「自己認識」を私達一人一人に刻み込んだと言えます。本書ではそうした「現状認識」と「理想」とのギャップを徐々に埋めていく過程で、自分自身をマインドコントロールし勉強に取り組ませるようにする、ということが述べられていました。

やっとマインドコントロールの話に戻りましたが(笑)、そう、この「現状認識」と「理想」とのギャップ認識こそがマインドコントロールには必要です。なぜなら「じゃあそのギャップを埋めるために~~すればいい」というのが具体的に分かるからです。具体的には「いつまでに」「何を」「どのように」という具体的な指針が見えてくるからこそ、次の一歩が踏み出せるのです。

社会人に対しては、各自が「解けなかった問題をどう解決するか」ということを各自が考え、試行錯誤して勉強に取り組むことで、講師が手取り足取り教えなくても各自が主体的に学ぶようになる。学生であれば、まだそうした主体的な学習習慣が身についていないのであれば、こうしたことをきっかけに「何から始めるべきか」を生徒と教師が相談しながら進めていく、そういうプロセスが必要になってきます。

そもそもの話に戻ると、「面倒くさいこと、大変なこと、嫌なこと」をなぜ人は回避したがるのか?それは「やりたくない」ことだからです。ではなぜ「やりたくない」のか?それは穴掘りの拷問の例(本書34頁)のように「意味がない」もしくは「報われない」「先(到達点)が見えない」からです。

だからこそ、ゴールを先に決めてしまう、そしてそのゴールを一度「疑似体験」してみる。そうすることで、少なくとも「先が見えない」ものではなくなるし、ゴールが見えることで「そのゴールに向かう」というとりあえずの意味・意義付けはできるでしょう。そしてそこに向かって一定の方法で頑張れば「報われる」という希望が見えてくる。こうすれば、少なくとも「やりたくない」という理由は合理的に消せると思いませんか?

そう、「やりたい/やりたくない」から「やる/やらない」という、よりシンプルな発想で取り組めるようになるのです。これは大きいですね。なぜなら「やる/やらない」という二項対立は「やる」「行動を起こす」ことで解決するからです。

私の新人研修の時と同じように、「このギャップを埋めたい(=合格したい)と思わないか?」と自らの脳に語り掛け、次に「じゃあどうやってそのギャップを埋めるのか、一緒に考えてみないか?」と脳を頑張らせる方向へ仕向け、そして「じゃあこの方法に従って、一緒にやってみないか!」と脳から体へ指令を出させる、こうしたプロセスを踏むことで「マインドコントロール」が完了するわけです(笑)

 

今日のポイントのおさらいですが、「現状認識」そして「理想とのギャップの認識」にあります。そしてこの認識されたギャップを埋めるための方策を行うことを通じて、「やりたくないことでもやろうとするモチベーションを生み出す」という所がポイントでした。そしてその「現状認識」に役立つのが「メタ認知能力」つまり「俯瞰して物事を見る能力」(127頁)だということです。

ですが、こう簡単にいけば話は楽なのですがこの「現状認識」「自己認識」を受け入れるのは時として難しいこともあるはず。そうですね、自分の「足りないところ」「欠けているところ」を受け入れるわけですから。

次回は今日ご紹介した「現状認識」「自己認識」が機能するための「3つの条件」について解説をしていきたいと思います。