【連載】「中高オール学年一位」の秘訣 ~勉強を「楽しむ」ということ その二~

皆様

前回のテーマは「勉強を『楽しむ』ということ」について、3つのポイントのうち一つ目をご紹介させていただきました。

覚えてらっしゃいますでしょうか?そう「ゲーム化」でしたね。実はこの「ゲーム化」の手法、学生の受験勉強だけでなく社会人の方の学習にもとても効果的です。

たとえばアプリで英語の勉強をされている方、多いですよね?「一日10分でOK」「一日1フレーズ覚えればOK」「通勤時間の間だけでOK」なんて謳っていますね。その学習時間や単元、課題をクリアしたら進捗が分かる(クリアしたことが分かる)ようになっている。これらは立派に「ゲーム化」の要素を取り入れているんですね。

「一日10分」とか「通勤時間の間だけでOK」なんて言われたら、ちょっとだけならやってみよう、っていう気になりませんか?英語を勉強(もしくはやり直)したいと思っている方、でも忙しくてなかなか時間が・・・っていう方にはこうしたうたい文句の学習教材はハードルが低くて、まさにゲーム感覚で「取り組んでみようかな」という気になる。これが実はすごく重要なのです

なぜか?それは「人間の性(さが)」を逆手に取った、非常にうまい仕向け方なのです。なぜなら人間は楽をしたい生き物だからです。これはあなたも私も、人間一般が持つ、否定しようのない「性(サガ)」です。ではそれを逆手に取ってしまおう、というのがこの「ゲーム化」の発想です。

前回のテーマにつき「勉強なのに、軽いノリでけしからん!」(笑)というかたもいらっしゃるでしょう。ですが、誤解のなきよう最初にお断りをしますが、ここでは学習「態度」と学習「成果」とは全く別のものとしてお話をしています。姿勢云々のお話や考えについては、いったん脇に置いて私の記事を読み進めていただけると幸いです。

さて、今回は残り二つのテーマ②3種類の目標設定③二重目標について解説をしていきます。

「3種類の目標」って何だろう?と思いませんでしたか?私もとても気になりました。マジックナンバー3ですから、なおさら「知りたいっ!」っていう気にさせてしまいます。

本書で紹介されているのは「数値目標」「行動目標」「状態目標」の3つでした(77頁)

これは一体どういうことでしょうか?

最初の「数値目標」は、目標を具体的な数値に落とし込んで設定する、ということです。例えば「毎日英単語を10個覚える」「夏までに偏差値を10アップする」「期末試験の数学の試験を15点アップする」などです。

これは分かりやすいですよね?そしてこの「数値目標」は先ほどの「ゲーム化」とも密接に連動している要素です。上の例で言えば「10個覚えれば達成!」「偏差値10アップすれば達成!」「15点アップすれば達成!」っていうクリア条件が明確に分かるからです。

数値目標ははっきりしていて、ごまかしがききません。また数値を意識することで本人の目標も明確化され、そこに向けて集中しますから、何かしら「数値」を含んだ目標設定というのはとても効果的だと思います。

余談ですが私は趣味でマラソン大会に参加していますが、例えば「今度の大会は3時間半を切りたい」という目標を立てれば、そこから逆算して現状何が不足していて、大会までにどういった練習が必要か、という計画を立てやすくなります。そうすることで「無駄なトレーニング」というのが減り、かつてのような「ただ漫然と走り込み」ということがなくなりました。休む日はきっちりと休むということができるようになり、疲労を抱えたまま質の低いトレーニングを繰り返す、結果として故障してしまい走れない、ということが大幅に減った気がします。

そう、数字は良くも悪くも、非常に効果のある目標設定手段なのです!

しかし数値に落とし込みづらい目標もあるでしょう。たとえば小論文など論述形式の科目、出題については一概に「XX点アップ」という目標は立てずらいでしょう。そうした時は、「行動目標」が重要だと本書では紹介されています。

この「行動目標」、本書では「状態目標を達成するために『こんなことをしたい』という行動を決める」ことだと紹介されています(79頁)。ちょっと分かりづらいですが、要は「数値目標」を達成するためのプロセスにおいて何をするか、ということです。

例えば小論文の点数が悪いとき

①誤字脱字による減点が多い → 漢字の書き取りを毎日練習する

②時間が足りず、回答が終えられないことが多い → 時間配分の訓練をする

③自分で何を書いているのか分からなくなることが多い → 論文の型を学ぶ

などです。この「行動目標」をベースとして、例えば

漢字の書き取りを毎日練習する → (テキスト名)の必修漢字を毎日1ページ書き取り練習をする』

時間配分の訓練をする → 「200字の論述を30分以内に解けるようにする」

論文の型を学ぶ → (テキスト名)を来月までに読み終える

などといったようにより詳細な「数値目標」に落とし込んでいくことが可能です。ですから「行動目標」は「数値目標」を考えるための最初のステップ、と考えていただいても良いかもしれません。

そして最後の「二重目標」、これについても見て行きましょう

本書では「『最低限、達成したい目標』と『達成できたら理想的な目標』という二つの目標を設定する」と紹介されています(80頁)

これは日常でもよく行われていることかなと思います。例えば受験なら「本命と滑り止め」なんて話、よく聞きますよね?アレです。

本命一本だとさすがにメンタル的につらい、だから最低限の目標(滑り止め)を保険として設定し、「どう転んでも最悪の結果は免れよう」とするものです。

日々の学習でもおそらく全く同じですね。いきなり「今度の期末試験で90点取る!」と力んで、何が何でも90点以上を取りに行こうとするその気持ちは大切ですが、たとえば「最低でも75点以上、良ければ85~95点の間はとりたい」なんていう目標設定にしてみたら、かなり気持ちが楽になる気がしませんか?

私がかりに生徒だったとしたら、

今度の期末試験で90点取る! → かなり辛い(っていうか、大丈夫?)・・・

最低でも75点以上、良ければ85~95点の間はとりたい → 85点以上取れたら嬉しいから、今からやるぞっ!(75点なら取る自信あるし・・・)

っていう心の声が響いてきそうな感じがします。

これ、実はかなり重要です。

というのは、「行動目標」から「数値目標」に落とし込めたまではいいけど、その目標に忠実に毎日行動するのってなかなか難しい。本書でも紹介されているように「目標が『願望』になって、三日坊主で終わるパターンが多い」(82頁)からなんですね。その通りなんです。

また私のマラソントレーニング話でたとえてみましょう。

例えば次のマラソンでの目標タイムが「3時間30分(いわゆるサブ3.5)」だとしましょう。その時、この「二重目標」を使って

最低でも3時間40分、努力目標は3時間35分、理想は3時間35分~25分の間に収まること

みたいに行動を二重、三重にしていくことです。そうすることで、日々の練習も、例えばロング走(長距離走)の目標が例えば

「ハーフで最低でも1時間50分、努力目標が1時間45分」→「20kmロング走で最低でも1時間45分、努力目標が1時間40分」

だったり、たとえばスピード走(短距離練習)で

1,000mを最低でも3分50秒台前半で5本、できれば7~8本消化する」とか「1,000mを最低でも3分30秒台一回マーク、3分40秒台を3回マークする

なんていう目標を立てれば、「何が何でも」という根性論に頼った練習にはならず、また明確に「今日はこれでクリア条件達成!終わり!」というのが見えるので練習の心理的な負担が楽になります。目標や達成条件を決めないと、焦って練習量をやみくもに増やしたり、何となくダラダラ練習を続けてしまい、結果として疲労だけがたまり故障につながる、という悪循環に陥ってしまいます。勉強もそれと全く同じだと思っています。

 

ここで「二重目標」を「逃げ」、「言い訳」みたいに考える方がいらっしゃるかもしれません。

確かにこうした目標の立て方だけをみれば一見すると「逃げ」のようにも見えてしまうでしょう。

しかしながら、根本の目標である「XXX大学合格」、そして「将来XXXになる(XXXとして働く)」というキャリアは全く変更ありません。根本をぶらさず、そこに至る長いプロセスをいかに乗り切るか?を考えた結果の方法論なのだと考えた方が良いでしょう。

受験は長く辛い闘いです。学生が人生で最初に立ち向かう試練と言っても過言ではありません。高い目標を掲げるのはもちろん大事なのですが、「いかに心おれずに最後までたどり着くか」ということもそれと同じくらい大事なことです。そしてさらに言ってしまうと、それは受験が終わった後の「燃え尽き」を防ぐという意味でも重要です。

これはよくマラソンにたとえられます(くどいでしょうが・・・)。マラソンは短距離走とは違って「ゴールすること」がまず一番の目標。ゴールしなければそもそもタイムが計測されない。どんなにトップ選手であっても、ラスト一キロで棄権すれば「記録なし」となってしまいます。

先日の東京オリンピックでも、ラスト2キロあたりで2番手を走っていたケニア選手が棄権、とてももったいないなと思いました。大学受験も、例えば冬休みやお正月に風を引いてしまったり、メンタル不調になってしまったらそもそもレース(受験)会場に行くことすらできません。体調不良なら安静にしていれば治るでしょうが、メンタル不調ともなるとそうはいかない。

余談ですが、私が「中高オール学年一位」を達成するために、絶対に欠かせなかった良きライバルがいました。かれはそれこそ「中高オール学年二位」の実力の持ち主で、私よりもはるかに効率よく勉強し、陸上部に所属しながら勉強も好成績を上げていました。そんな彼ですら浪人を経験し、そしてその浪人の途中で大学受験そのものを諦めてしまった・・・という悲しいエピソードがあります。

昨年、その友人とほぼ20年ぶりに再会し当時の話を聞くと「大学受験はもういいや。早く社会に出て働きたい」という別の目標ができたから、というものでした。今ではかれは中古リサイクルショップを経営する社長、メディアにも度々取り上げられルほどにまでなりました。

そんな優秀な彼ですら「受験はもういいや」と思ってしまう瞬間がある。旧友の話を出すのは少々筋違いかもしれませんが、やはりそれくらいメンタル面で長く厳しい道のりだ、ということがお分かりいただけるでしょう。

 

それでは、今日のおさらいです。今回は「行動目標」と「二重目標」について解説しつつ、前回の「数値目標」との関連、そして具体的にどうやって目標を立てていくか、の考え方について解説をしました。肝は

「行動目標」→「数値目標」→「二重目標」

の順序で目標を立てるとよいだろう、ということ。そしてこれを前回までの「外発的動機」「内発的動機」と接合すれば

「外発的動機」→「行動目標」→「数値目標」→「二重目標」→「内発的動機」(主体性)

になります。つまり「外発的動機」を「内発的動機」へと転換する具体的な施策こそがこの「ゲーム化」にあると言えます。

なによりも勉強を「楽しい」「心理的な負担が少ない」と思えることで、無理なく続けられるようになる(主体的に行えるようになる)という点が素晴らしいと思います。

そして逆説的なようにも見えますが、「外発的動機」があるからこその「内発的動機」だということ。やはり最初の最初は、押し付けであっても「東大に行け!」といったショック療法的なきっかけづくりは一つの方法だとも言えます。

もちろん、明日からいきなりご子息に「お前は東大を目指せ!」と言っても、ポカンとされるだけでしょうから、方法論を伴ったうえで伝えてあげて下さいね(笑)東大に限ったことではなく、本人が「絶対無理」と思っているようなことを最初は目標として与えてもいいのでは?と思うのです(もちろん勉強面で、の話です)。

 

次回は、今まで見てきた「ゲーム化」の真骨頂である「『楽しむテクニック』を使って『ゾーンに入る』」(64頁)について解説をしていきたいと思います!