【連載】「中高オール学年一位」の秘訣 ~勉強を「楽しむ」ということ その一~

皆様

前回の投稿で、「内発的動機」を持続させるためには実は「楽しむ」ということが必要になってくる、というテーマを最後にお話しました。今日はその点の深堀をしたいと思います。

突然ですが、皆様は勉強が好きでしたか?

おそらく大半の方がNoとお答えになるでしょうし、まあそれは当然の答えだと思います。私もそうでしたが「勉強そのもの」が好きだったわけでは決してありません。そう、学年一位の人間ですらそうなのですから、そこは安心していいポイントです(笑)

では逆に、皆さんが子供の頃、学生の頃に大好きだったこと、何時間でも続けられ、それこそ親に「もうやめて勉強しなさい!」と怒られるくらい熱中できたことは何でしょうか?

大抵それは「友人との遊び」「ゲーム」「漫画」といった「楽しいこと」ですね。私も小学生のころゲームは好きでしたよ(中学校から家庭内でゲーム禁止となってしまいましたが・・・)

前置きが長くなりましたが、勉強を「楽しむ」とは、まさに遊びのように「遊びのごとく勉強をすること」だと私は解釈しています。本書でも「非認知能力の中で最強に内発的動機として機能するのは、『楽しむ』という意味での楽観生です。好きこそものの上手なれで、『楽しい』と感じられることは、「やりたくない」とは考えず、逆に自ら進んで努力を続けることができますよね」(67頁)と紹介されています。

「勉強が楽しい」なんて言うセリフ、そんなこと漫画だけの話なのかなと子供の頃はずっと思っていました。しかしやはり当時を振り返ってみると、私が学年一位の達成のプロセスでそう思う瞬間がいくつもあったように思います。だからこそ6年間も継続できたのだと考えています。

そしてこれは何も私が特殊なわけでもなく、いかに「楽しい」と思える瞬間、ないしその要素を日々の勉強の中に見つけていくか、もしくは作り出していくか、それだけの話だと思うのです。そう、それこそがまさに学習塾の役割だとも思うのです。

私が自己分析をした場合、勉強を「楽しい」と思える要素の根源的なモチベーションは「他人と関わらなくていい(から楽、もしくは好き)」ということだったように思えます。子供の頃から近所の子供と遊ぶ機会もほとんどなく、おばあちゃん子で過保護に育てられた私は、いつしか「一人でいること」に楽しみを見出すようになり、それが勉強に向かったというのが実のところです。

私の同期はちょっと変わっているためあまり参考にはならないかもしれませんが、皆さんも「楽しい!」と思って夢中になって取り組んだ経験は必ずあるはずです。その「これ楽しい!」と思えることを徹底的に深堀して、各自の勉強のプロセスに反映していく、究極はこれだけだと思うのです。

では具体的にどうするか、本書では具体的なやり方が三点紹介されていました。それは

①ゲーム化②3種類の目標設定③二重目標

です。そして今日お話したいのは「ゲーム化」について。

「ゲーム化」というのは、社会人となってからも非常に有効な手段です。私が所属していたIT企業でも「ゲーミフィケーション」などと呼んで、新人研修等での社員のモチベーション管理・目標達成のための動機付けの手段としてよく取りざたされました。平たく言うと「勉強/仕事をゲーム感覚で行う」ということです。

仕事や勉強をゲーム感覚で行うとは、何もテキトーに、ふざけて取り組むということではありません。

そもそも「ゲーム」の定義とは何でしょうか?それは「クリア条件が明確である」ということです。

どんなゲームも、ある一定の条件を満たして初めてクリア(終了)しますね。例えばラスボスを倒す、一番になる、最後の目的地までたどり着く、など「~~をすれば終わり!」という条件が明確です。それを勉強や仕事に応用してみよう、というのがこの「ゲーム化」です。本書でも「クリア条件が数字で設定されている状態」(70頁)と述べられています。

この「ゲーム化」「ゲーム感覚」というのは、何もゲームをする時だけではなく仕事や勉強に取り組む上でのモチベーションとしても非常に重要です。なぜでしょうか?

そもそも、我々は仕事や勉強をなぜ嫌になるのでしょうか?考えたことはありませんか?

嫌になる心理は簡単で「先が見えない」「やりたくない」ものだからです。私も経験上、IT業界というのは終日デスクに座って一人で作業をするのが多い業種です。当然先が見えない、エンドレスな作業になることも珍しくなく、超過残業になりメンタルをやられるケースというのが少なくありません。

受験勉強も一見すると、何年も先の目標に向かってただひたすら修行のように、毎日を耐え忍びながら勉強をしなければならない。遊びたいなんて思ってはいけない、そういうストイックな姿勢を毎日保ち続けるのは確かに重要ですが、多感な時期の学生にとっては非常に酷だと言えます。一人でいることが好きな私でさえそうでした。

人間はそうした「先の見えない」「終わりの見えない」作業を「やりたくない」「避けたい」と思いますが、それは心理学上ごくごく自然な反応だと言えます。

そうした「先の見えない作業」に「~~をすれば終わり!あとは遊んでもいいよ」という何か一つの目標(これがまさに「クリア条件」)があるとしたらどうでしょうか?「それを早く片付けて、遊びたい!」という心理になりやすいのではないでしょうか?

こうしたやり方は不真面目でしょうか?でも私はそれでいいと思っています。そしてそれこそがまさに「やりたくないことでも結果を出す」という本書のタイトルが言わんとしている趣旨なのです。そう、受験勉強を「真面目にやれ!」とは一言も言っていません。重要なのは、受験勉強で「結果を出す」ことなのです。

この手の話は、社会人になってからも良く誤解されやすいですね。特に大企業なんかでは「真面目に働く」ことの方が「結果を出す」ことよりも重視されたりする。だから「サボっているように見えるが、結果をちゃんと出している社員」っていうのは「不真面目だ!」なんて変なレッテルを張られてしまうんですね。そういう人は結局組織を去ってしまう。「態度(あり方)」の話と「結果」の話とは、受験勉強においても切り離した方が良い議論の一つでもあります。

ここを間違えてしまうと、効果のないことを延々と続ける羽目になりかねない。まさに現役時代の私が陥っていたことです。そして「真面目にやっているのに、なんで成績が伸びないんだ!」っていう変な脅迫概念を自分に植え付けてしまうのでむしろ危険ですらあります。

ちょっと話はそれますが、私の趣味のマラソンでも、やはり日々のトレーニングは辛い。時には一日20キロ、30キロと長距離を試合前はこなさなければならないときもあります。そんな時ランナーの方が良くやるのは「温泉をゴールにしてランニング練習をする」というものです。走り切った後に温泉で汗を流し、冷えたビールでリフレッシュ、というご褒美(ある意味でのゴール)を与えて、やりたくない目標でも達成するように自分を仕向ける術です。また、例えば登山を趣味にされる方なども、「上っている最中は本当につらいが、登頂した時の山頂からの絶景が楽しみだ」とおっしゃる方が多いです。この場合も「登頂」というゴール、そして「山頂からの絶景を見たくて」というご褒美を自分に与えて、辛い登山を乗り切ろうというやり方です。

これらはいずれも立派な「ゲーム化」のやり方ですね(登山は、それ自体が「ゲーム化」した非常に高度な趣味だと思います!)。これを受験勉強にも応用しよう、という発想です。

ではどうするか?

一番簡単なやり方は「目標の細分化」です。例えば「志望校に合格する」といった漠然とした目標をまず、

3年生の冬の直前模擬試験で、偏差値68を達成する

といった、明確に合格できるための具体的な数値目標に落とし込み、さらに

3年生の夏休み明けまでに偏差値63を達成する ③3年生になるまでに偏差値60を達成する。

といったマイルストーンを設定します。現在が仮に3年生の春学期、偏差値が58だとしたら

夏休み明けまでに偏差値5アップする

というマイルストーンを次に設定します。この「偏差値5」のカギが例えば英語にあるとすれば、

「英語の得点をあと15点アップして」偏差値5アップする

とより具体化できますね。そうしたら次にこの「15点」の要素を分解するのです。例えば

「長文で10点、文法で5点アップする」

とより具体化できたらしめたもの。例えば長文読解が足を引っ張っている原因が「語彙不足」にあるのだとすれば

「一日新しい単語を5個覚える」→「日々の確認テストで満点を取る」

だったり、または語彙はあるけれども読むスピードが遅い、という時は例えば

「100ワードの英文記事を毎日3分以内で読む」→「読めた時間を毎日記録する」

なんていうタスクを設定してもいいかもしれません。

さて、振り返ってみましょう。「志望校の合格」という遠大な目標が、「一日新しい単語を5個覚える」「100ワードの英文記事を毎日3分以内で読む」というかなり具体的な日々の作業に落とし込めた感じがしませんか?

⑧の最小単位にタスクを落とし込むことが「ゲーム化」に相当します。新しい単語を5個覚えれば今日は終わり、100ワードの英文を3分以内で読めれば今日は終わり、ということが明確に分かっていれば気が楽になりませんか?そして「小テストで満点」「読めた時間の記録」という具体的な確認手段があれば、実際にできたかできないかも一目瞭然、モチベーションも上がるはずです。方法はこれだけではないでしょうが、少なくともただ漫然と「勉強しなさい」と言われるよりもはるかに効率よく、そしてモチベーションを維持しながら取り組めるはずです。

実はこの「ゲーム化」の手法、ITコンサルティングの世界でもよく用いられる「ブレークダウン・ストラクチャー」の手法とそっくりです。

ITシステム構築の世界でも、最初にクライアントが達成したい要件というのはかなり漠然としています。例えば「顧客満足度の向上を促すシステム」「中小企業のDX対応を促進するシステム」「労務管理を省力化するシステム」など、目的は高尚なのですが「で、どうするんですか?具体的に?」っていう目標が最初はほとんどです。

こうした「漠然とした目標」を具体的なシステムに落とし込むために「ブレークダウン・ストラクチャー」が用いられ得ます。

例えば「顧客満足度とは何か?」の定義、顧客満足度が「向上する」とはどういうことか?その測定方法/基準は?など、漠然とした目標を具体的な用語・定義に落とし込むためのフレームワークのようなものがこの「ブレークダウン・ストラクチャー」と言われます。

考え方は受験勉強も全く同じです。つまり「志望校合格」という漠然とした目標を、年単位・月単位・日単位に落とし込み、やることを明確化するということです。「ゲーム化」はそのブレークダウンされた要素一つ一つを「楽しんで、主体的に行うため」の動機付けだと理解していただければよいかと思います。

以上が「ゲーム化」のご説明でした。次回の投稿では残りの②3種類の目標設定③二重目標についてお話をしていきたいと思います!