「24」をめぐる議論を考える ~公文書(法案テキスト)の読み方・序章~

 コロナ禍のロックダウンと合わせて、今フランス国内で大騒ぎとなっている「24」の問題、おそらく近い将来日本でも他人事ではなく大問題になる可能性があります。「我々を守るものを守る(”Nous protegeons ceux qui nous protègent.“)」という目的のもと、「ジャーナリストによる警察・機動隊の写真、動画撮影と、その拡散(SNSはじめネット上で)を禁じる」というこの法案。では警察は秘密警察化するのでしょうか?誰が、何の目的で?ジャーナリストの表現の自由は?そしてそもそも「ジャーナリスト」とはだれを指す?一般市民は含まれるのか否か?すべてが判然としないまま上院・下院で審議は続いています。

 フランスだけでなく、外国で大きく報道されるニュースはその情報源がどこにあるのかを十分に確認しなければ、簡単にデマニュースやそれこそ「フェイクニュース」に簡単に踊らされてしまいます。ではフランス国内の「24」をめぐる議論とは、そもそも何なのか?何が焦点となっているのか?もっとも有効な手段一次資料、つまり法案そのものを議会HPから調べて解釈することです

 政府文章を調べるなんて、専門家がやることでは?と思われるかもしれません。しかし日本でもそうですが、今は情報公開の時代、外交文章など一部を除き政府文章(公文書)は基本的に国民だれもがアクセスできるものです。そしてそれは外国人の我々であっても同じです

 新聞やメディアのフィルターを通じて発表された「二次資料」に対して、公文書は「一次資料」と呼ばれ、まさに情報源そのものです。我々はメディアによる解釈・分析が織り込まれた情報を新聞、テレビ、ネットその他様々な媒体(つまり「メディア:媒体」)を通じて知るわけですが、それは誰かの解釈でしかない。そしてその解釈はどんなものであれ必ず中立ではありません。「24」をめぐる議論も、そもそも政府側・与党の見解と野党との間では見解が正反対で、何が正しいのかよく分からない。メディアの論調を聞いていてもそのメディア自体が政府寄りなのか、野党寄りなのかで偏りがあり100%正しいわけではありません。

 そういう時に必要になる能力が、「一次資料(つまり情報源そのもの)を、自分で読み自分で解釈する」能力です。そして外国語の文章であれば「しかるべき外国語スキルを持って」という条件が加わります。背景知識はさておき、今回はこの「しかるべき外国語スキル」の初歩の初歩をご紹介していきたいと思います。

 ではなぜ公文章(今回は法案文書)なのか?政府や議会が公表する文章は新聞やアナリストのコラムとは異なり(当たり前ですが)しっかりしたフランス語で書かれています。表現等はかなり硬く、最初は読みずらいのですが、使われる表現はパターン化されておりきちんと学習すればシステマチックに読みこなすことができるようになります。私は大学院時代にフランスの議会研究をしていましたが、法律の条文、審議中の法案、選挙結果などの公的文章を大量に読みこなす必要がありました。一見大変そうに見えるこの作業、実はかなり機械的に読みこなし、情報収集することが可能です。今回から何回かにわたり「政府文章の読み方」のコツを通じて、「24」の問題を考えていきたいと思います。

 ・・・と硬く考えるのはいったんここでやめましょう(笑)次回の投稿に向けて皆さんも「予習」をしていただければと思いますが、”sécurité globale”法案に関するフランス議会HPの以下リンクをご覧ください。

http://www.assemblee-nationale.fr/dyn/actualites-accueil-hub/securite-globale-adoption-de-la-proposition-de-loi

※ページ冒頭にいきなり”adoption de la proposition de loi”とあるので「え!もう可決されちゃったの!?」と驚かれるかもしれませんが、状況としては下院で可決され、現在は上院で審議中です(2020年12月13日時点)

何をどう見るの?っていうところからそもそも良く分からないかもしれませんので、法案発議のプレゼンテーションに関する議員の演説動画を一応見ておいてください。

 http://videos.assemblee-nationale.fr/video.9891263_5fb429f23cd81?timecode=473092

法案審議に先立っての①議員二人(M.Jean-Michel Fauvergue / Mme Alice Thourot)②所管の大臣(内務大臣Gérald Darmanin)の法案説明をお聞きいただければ、と思います。